A:近東の大怪鳥 コンヌ
ズー属という鳥は、近東地域とエオルゼアの間を、季節ごとに行き来する性質を持っているの。「コンヌ」はその中でも特に凶暴な存在よ。
しばらく姿を見せていなかったんだけど、最近になって、目撃報告が増えてきている……。
どうやらバイルブランド島に、ふたたび渡って来たようね。
~手配書より
https://gyazo.com/2b84ab8d5c8ee72eec0534d708ae191e
ショートショートエオルゼア冒険譚
バイルブランド島に生息する野鳥の数は他の地域に比べても多い。中でも温暖な気候と海に囲まれた島国であることから、とりわけ渡り鳥の宝庫でエオルゼアの鳥類学者の多くがバイルブランド島に住み着くか、別荘を構え専用の研究室を保有していることが多い。
一口に渡り鳥と言っても様々な種類のものがいて、中には通常は魔獣やモンスターに分類されるものもいる。例えば、ワイバーンの一種で暑さに弱く涼しい地域を求めて移動を繰り返す種のものがいるのだが、このワイバーンもエオルゼアでは「渡り鳥」と呼ばれ、その旅の途中でバイルブランド島に寄り、数カ月滞在することから所謂「旅鳥」のカテゴリーに分類されている。
そして「渡り鳥」というカテゴリーにおいてその大きさが最大とされているのが「コンヌ」だ。コンヌは大型の鳥類系モンスターであるズー科に属する種だが、大変気性が荒く危険な為、エオルゼアではドラゴンに近い存在として扱われている。季節に応じてエオルゼアと近東地域を行き来しているのだが、群れを成さず個体単位で行動することもあり生息数は非常に少なく、鳥類学者からは絶滅が危惧されることから保護を求める声が上がる一方で、地域の安全を優先する政府や地域住民からはその危険度から討伐の要請が絶えず、モブハントのターゲットにもされていて、その対応についての意見は割れている。
今回依頼があったのは外地ラノシアのキャンプ・オーバールックを北に少し行くとあるゴブリン族の採掘場だ。リムサ・ロミンサに対して新たな鉱脈を求めて侵略行為を行うゴブリン族が黒渦団に討伐を依頼してくるというなんとも厚顔無恥な話だが、そもそもコンヌの寄生地域はその個体数が少ないこともあり、ほとんどが未確認となっているのだが、今回は寄生地が確認できていることが救いだ。
とはいえ、コンヌの巨体を満足させるほどの食料にありつけるような場所は滅多にない上に、渡り鳥であるコンヌの行動範囲は果てしなく広い。一度捕食のために飛び立てば数週間寄生地に戻らないこともザラだという。
あたし達は長期戦も覚悟して臨んだ…はずだったのだが…。
あたしも相方もなんせ飽きっぽくて堪え性がない。4日も捜索すると嫌気がさしてきてしまった。
何せゴブリン達の採掘場といっても彼らの採掘に計画性などある訳がなく、採掘場の中は岩山を蟻の巣のようにあちこちと規則性なく掘り進んであって、いちいち現在地を確認しないと迷ってしまう迷路のような造りになっているため隅々まで見て回るとなると体力的にもかなりきついし、変わり映えしない洞窟の景色の中を迷わないよう神経細かくチェックしながら半日以上歩き回るのだから精神的にも想像以上に疲れる。
それが終われば今度は山を登ってニーム浮遊遺跡を隅々まで探索する。もちろんコンヌがこんな近場で食事しているかどうかも分からない。全く無駄な事をしているかもしれないと頭の隅では思いつつも一縷の望みをかけて足が棒になるまで歩き回る。拠点としているキャンプ・オーバールックに戻っても食事が喉を通らない程疲れ果てて泥のように眠るだけだった。
当初年頃の女性が来たとテンションが高めだった僻地勤務を強いられているキャンプ・オーバールックの黒渦団員達も、お化粧の代わりに目の下にクマを作るあたし達の強制労働にも似た滞在生活見てドン引きしたらしく「お嬢ちゃんたち、たまには休んでパーッと遊んだらどうだ?」と本気で憐れまれる有様だった。
そんな状態のまま滞在生活も2週間を過ぎようとしていた。さすがにあたしも相方も限界を迎え、今日コンヌに会えなければもうお家に帰ろうと話しながらゴブリンの採掘場へと入って行った。
そうは言っていたが二人とも内心諦めながら、完全踏破を繰り返したため地図すら不要になった迷路のような採掘場を半分まで見て回り、3つ目の扉を開けた。
その時、開いた扉から強烈に風を切る音と体を圧し戻すような風圧を感じた。
「お…お…おお‥‥」
あたしも相方も言葉にならない声を上げた。
居た!コンヌ~~~~!
翼を広げればゆうに10mは超えるであろう噂に違わない巨大な体と4~5mもあろうかという長い首。
いや、そんなことよりもやっと出会えた感激はまるで探し求めた運命の人を見つけた時の如くで、相方の目は涙でいっぱいだったし、あたしはその長い首に抱き付いてコンヌのほっぺにチューしてあげたい衝動を抑えるので精一杯だった。